インドでクレジットカード入りの財布を無くし、失意のまま翌日に国境を越えてネパールで本当に無一文になってしまった話

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海外旅行で一番焦ったできごと。
インド南部の都市チェンナイに入ったのが、2016年9月27日。
それから二カ月もの間、インドを周遊して次は陸路で国境をぬけてネパールに行こうという時期だった。
インド最後の町、バラナシ。
バラナシはヒンズー教徒の最大の聖地で、ここにある聖河ガンガー(ガンジス川)で沐浴したり、死んだら火葬して川に流してほしいと願う人がたくさんいて、そういった巡礼者が集まる町だ。そのバラナシにて、次の日にインドを抜けてネパールに行くという最終日に事は起こった。

今まで旅をしてきて、こんな大ポカをやらかしたことはない。
インドという国で一番やってはいけないことをしでかした。
インドは今回初めて訪れる国だった。前評判通り、油断してはならないと緊張感をもって旅をして二カ月。
ぼられることもなく、お腹を壊すこともなく、犯罪に巻き込まれるようなこともなかった。
なんだインドは思ったより、気軽に行ける国じゃないか。そんな風に思っていた。

そうした油断が生んだ悲劇。
今思うと、本当に凡ミス。ジーンズのポケットの中に財布を入れたまま宿のランドリーサービスに洗濯物を出してしまった。
先日の晩に洗濯物を出して、その日の昼過ぎに外出しようとした時にようやく財布が無いことに気が付き、洗濯物に一緒に出してしまっていることを思い出し、急いで宿のおっちゃんに話を付けにいった。

この宿ではランドリーは外部の洗濯屋にまかせており、すぐに電話をしてくれたが繋がらない。
「しばらく待て」と言われ、待ってはまた電話させを繰り返して、ようやく洗濯屋に電話がつながったが、そんな財布は無かったという。
「いやいや、そんなハズはない。ちゃんと探せ。」とのやり取りを繰り返していたが、埒が明かないので洗濯した現場に行かせろと頼んで、見に行くことになった。
そこで衝撃の事実が判明した。
洗濯屋はガンジス川のほとりで洗濯していた。

ガンジス川

しかも、マニカルニカー・ガート(Manikarnika Ghat)という24時間火葬の煙が途絶えることのない火葬場のすぐそば。
それに加えて下流側だった。
(いやいやいや、死体とかウンコとか流れている川で洗濯して、汚しているだけやんけ!)とは思ったが、彼らにとっては聖なる河なので実は普通のこと。明らかにゴミやウンコ、火葬した灰やそのままの死体も流れている横で、体洗ったりしているので洗濯するぐらい当たり前の事なのかもしれない。
この服着れるのか?と思いながらも、もしかして川岸に落ちているのでは?との期待から小一時間ほど探したが、当たり前のように出てこない。まあほぼ確実にこの洗濯屋がネコババしたのだろうが、なにも証拠がない上に、そもそもポケットに財布を入れたまま洗濯をだしたという大ポカをやらかした僕が原因なので、あまり強くは言えない。
宿のおっちゃんも「クレジットカードを無くしたなら早く止めた方がいい。インドで財布を無くしたら100%戻ってこない。」という。まあ僕もその通りだと思い、すぐにクレジットカード会社に差し止め依頼をすることにした。

持っていたクレジットカードの紛失した場合の緊急連絡先に、インドからのダイレクトコール番号がなかったので、日本にいる妹にLINEで頼んで代理で差し止め要求をしてもらった。
わずか五分後には「クレジットカードを止めたよ!」と妹から返信があった。出来る妹で助かった。

財布に入っていたのは、116ドルと900ルピーにクレジットカード。
だが、こういうトラブルに対処できるように二枚目のクレジットカードは別のカバンに入れてもっており、ネパールまでの交通費となる程度の現金も所持していたので、旅はそのまま続けることにした。

そして翌日になり、ネパールに行くため宿を出た。
その日のバラナシは、もともと空気が汚いのに霧が発生してほとんど前方が見えない状態。
案の定、バラナシからネパール国境近くの町ゴーラクプルへ行く鉄道は遅延しており、7時45分発で予約していた電車は遅れに遅れて9時にバラナシを出発した。
およそ5時間かけて、ゴーラクプルには14時過ぎに到着した。
そして、駅を出てすぐにネパール国境のスノウリまで行くバスに飛び乗り3時間ほど走って、18時に国境に到着した。

ネパールとインドの国境スノウリに着いたときは、すでに日は落ちて真っ暗になっていたが、この国境は24時間空いており問題なく通ることができる。
陸路で国境を越えるのはあちこちで経験しているが、ここの国境は拍子抜けするほどフレンドリーで実に楽だった。
ネパール側のイミグレーションでも30日ビザをその場で5分で発行してくれる早業。

今日の目標は、国境を超えるまでではなく、ネパールにあるブッタ生誕の地であるルンビニに向かうこと。
もうすでに日は落ちてしまったが、スノウリからバイラワという町にバス(15ルピー)で移動し、バイラワからさらにバス(50ルピー)を乗り換えてルンビニに到着したときは、20時30分になっていた。

ルンビニには街灯がなく、この時間は完全に真っ暗。本当に闇。スマホのライトを頼りに宿についた。
そして翌日第二の悲劇が起こった。
現金は昨晩ですっからかんになっていたので、最後の頼みの綱である二枚目のクレジットカードでキャッシングをすべくATMに行く。

昨晩は真っ暗で気が付かなかったが、ネパールはインドと違ってウンコが!牛のウンコが道に落ちていない!すごく歩きやすい!などと変な感動をしながらATMに到着。
ATMにていつも決まっている暗証番号を打ち、20,000ルピーをまとめて引き落とそうとするもエラー。
(ああ、いつもの金額が大きすぎてダメなやつか・・・)と思い、今度は15,000ルピーにしてみるもエラー。
ああ、これでもダメか、じゃあ10,000ルピーで・・・。
ダメだった。
なんだこれ、この銀行のATMがダメなのか、じゃあ別のATMで5,000ルピー。そして3,000ルピーでもエラーした。
長い旅で慣れ切っていたATMでの海外キャッシング。
ATMでの英文をほとんど読み飛ばしていたが、さすがにおかしいと思い注意深く読んでみると「Pin code is Incorrect」の一文が表示されていた。
ここでもう真っ青。僕はまたしても信じられない大ポカをやらかしてしまった。暗証番号が間違っていた。
このクレジットカードは、海外に出る直前に作ったもので、自分で暗証番号を決めることのできないタイプのカードであったことをすっかり忘れていた。
クレジットカードやキャッシュカードなどATMで暗証番号を三回以上連続で間違えると、カードが無効になる。
そのことを知っていたからだ。

パソコンに暗証番号を記録していたことを思い出し、一応正しい暗証番号で再度試みたが、「このカードは使えません」と別の表示された。
現金もなく、頼みの綱のクレジットカードも無効になってしまった。
これで文字通り、本当に海外で無一文状態になってしまった。

これからどうやって生きていこうと思いながら、とりあえず一旦宿に戻り、宿の遅いWi-Fiを使ってネットで調べまくった。
代替の緊急カードをクレジットカード会社に頼んで送ってもらうか、家族に海外送金してもらう?それとも日本大使館に逃げ込む?など、色々ネットで模索していたところ、とある掲示板にこのような一文を見つけた。
「暗証番号を複数回間違えて無効になってしまっても、カード会社によっては24時間後に復活するカードもあります。」

僕は、この一文に望みをかけて翌日ATMに走った。
結果、すんなりと10,000ルピーが出てきたとき、「胸をなでおろすとはこのことか!」と実感した。
正直なところ、三回間違えても翌日にまた復活するようなクレジットカードはセキュリティ的にいかがなものかとは思ったが、今回ばかりは本当に助かった。
今まで累計40か国、2年間ほど旅をしてきたが、今回ほど焦ったことはない。
ただの書きなぐりの記事になってしまったかもしれないが、自分の戒めとして書き記しておく。