行き着いた所はアドリア海(2006/07/13-14)
簡単にスパゲッティなどでお腹を誤魔化して、バスに乗った。考えたら、ウィーンではまともにご飯を食べていない。高すぎて手が出せなかった。こんなふうに、移動に次ぐ移動でご飯はまともに食べないから、日本を出る前と比べてひと目でわかるくらい痩せた。日本から愛用していたベルトの穴が四つ分も縮まった。10kgは確実に体重が減ってるだろう。
二つの国境を越えて、深夜0時前にザグレブに着いた。ザグレブのバスターミナルは予想していたよりも大きく、窓口が深夜でも開いていて、バスも夜の便が出発している。急いでタイムスケジュールを見に行くと、残念ながらドブロブニク行きの夜行バスは今さっき出て行ったところだった。ここで、朝まで夜明かしして、朝一のドブロブニク行きのバスに乗って行こうかと思っていたが・・・。
以前、スロヴァキアのコシチェという街で見かけたポスターに、クロアチアにある"ロビニ Rovinj"という街の写真が載っていた。その写真の景色がまったくもって、ジブリの映画"魔女の宅急便"の街並そのままだったので、そのロビニという街の名前を記憶していた。タイムスケジュールで順を追って行き先を見ていると、その街へ行くバス、0時30分発の夜行バスがあるではないか。世界遺産であり、アドリア海に突き出た半島に旧市街がある"ドブロブニク"も魔女の宅急便に近い街並みではあるが、ロビニは盛り上がった半島の上に教会の塔がそびえ立ち、こちらのほうが、幾分か雰囲気が似ているように思える。なによりも、街がそこまでメジャーじゃないので、観光客が少ないかもしれない。プラハやウィーンでツアー客の盛り沢山状態に、嫌気が差してきていたので、リーとの話し合いの結果、ロビニに行くことに決めた。
ロビニ行きの切符を買おうと窓口に行くと、切符は直接運転手から買えという。よくわからないけど、深夜や早朝はそういう制度らしい。バス停留所に行き、待っていると、バスがやって来た。バスの運転手に切符を売ってもらおうとすると、切符が無いと駄目だという。意味がわからなくなった。どういうことだろう。確かに、みんな切符を持っている。なぜ僕らは窓口で売ってもらえなかったのか。さっぱり理由がわからない。切符を持っている人はどんどんバスに乗って行き、もう座席が残り少なくなったとき、車掌が座席が余ったから、乗っていいよと言ってきた。よくわからない制度だ。運がよければ乗れるということだろうか。なにわともあれ、深夜でも満員に客を乗せたバスはロビニへと出発していった。
バス車内ではほとんど眠れなかった。車窓を眺めていると、アドリア海が見えてきた。高台の道沿いをバスは走っていくので、アドリア海に半島沿いの夜景が映り、素晴らしく幻想的な景色だ。やはりそういう場所はリゾートの街として発展している。それらリエカやプーラという街で、他の乗客はほとんど降りていった。ほとんど乗客がいなくなったバスの中で、ロビニが本当に写真と同じような街なのか、僕は不安になってきた。
朝の7時にロビニに到着した。バスを降りると急に便意に襲われたので、バス停のトイレを借りた。使用料として5クーネ(100円)をしっかり取られた。すっきりしてから、周りを見渡してみる。アドリア海を見る。海の水を見る。驚くほど水が綺麗だ!透明度がかなり高い。そして、海沿いに歩いていくと、見えてきた旧市街。本当にビックリした。アドリア海にぽっかり浮かぶ街並み。ポスターで見た写真そのものが目の前にある。まさに魔女の宅急便の街だ。遠くから見ると、半島の中心が盛り上がっていて、一つの要塞みたいに見える。旧市街を歩くと、生活感あふれた出窓、規則性のない曲がりくねった道、海から吹く風の塩の匂い。なによりも早朝で観光客がいなく、最高の雰囲気だ。
街中をバックパック背負って歩いていると、買い物用の手押し車をガラガラと引っ張っているおばあちゃんに話しかけられた。しかし、おばあちゃんは英語は全く通じず、クロアチア語しか話せない。英語のYesやNoすらも理解してもらえない。お互い宇宙人と交信しているかのようだ。数分のやり取りの結果、どうやらプライベートルームの勧誘という事に気がついた。早朝でインフォメーションが閉まっており、宿の情報がまったく手に入らなかった僕らには願ったり叶ったりだ。結局、1人1泊100クーネ(2,000円)、朝食付きという事で話がまとまった。ここらのホテル料金が500クーネ(10,000円)前後するので、まあ妥当な料金だと思う。
おばあちゃんは、団地に一人で住んでいた。部屋は思ったより綺麗だ。もちろん、風呂やトイレはその家のものを使わせてもらうので、まるでホームステイしている気分。でも、全然意思疎通が出来ないのが悲しい。言葉って大事だなぁ~。やっぱり身振り手振りでは限度がある。