「中華人民共和国編(湖南省)」シルクロードを放浪した2006年の旅行記

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張家界を目指して(2006/03/27-28)

中国の仙人が住んでいそうな風景の世界自然遺産・武陵源のある"張家界(ちょうかかい)、ジャンジアジエ/Zhang jia jie)"に行く。朝5時30分に起きて、成都駅へ。直通で張家界へは行くことが出来ないので、途中の"懐化"という駅で一端下りて、またその駅から張家界行きの列車の切符を購入しなければならない。実にめんどうだ。
いつものように押し合い、人ごみに揉まれながら、改札を通り抜ける。今回とった切符は硬臥上。つまり三段ハードベットの一番上になる。天井との隙間が予想以上に狭く、本当に横になるだけのスペースだった。誤って何度も頭を天井に打ち付けてしまう。

30時間かけて翌日の午後1時30分に湖南省"懐化"に到着。到着してすぐに張家界行きの切符、硬座(ハードシート)を22元で購入。残念ながら明日10時30分発の分しか買えなかったので、今日はこの懐化で泊まることになった。
招待所で学割が利く場合があることが判明。懐化の招待所で二人一泊80元を60元(900円)にしてもらった。

武陵源自然風景名勝区(2006/03/29)

張家界行きの列車、10:32発のに乗車するため、朝10時にフロントでチェックアウトしにいく。駅前の招待所なので時間的には余裕だ。と思っていたら、この街はガイドブックにも載ってないだけに、日本人が珍しいらしい。フロントのお姉ちゃんがすごく好意的に「これからどこ行くの?」「中国にはいつまで滞在するの?」「日本はどの大学にいってるの?」など話しかけてくる。こちらとしても、中国でこんなに好意的な人は珍しいので、時間の許す限り話し相手になった。といっても、ほとんど筆談。最後のほうには何故か日本語教室みたいになってしまった。発車時刻が迫ってきたので、「再見!」とさよならを言い、駅に急ぐ。

駅で列車に乗り込んでみると、予想に反して小奇麗だった。ベトナム列車の木で出来た椅子のようなものを想像していたのだが、今の中国はかなり鉄道に力を入れているようで、新車両が多くなっている。
自分の席を探すと、何故か先に座っている人が・・・。切符を見せて「そこは私の席です」と言うも、なんか訳わからん事を言ってどいてくれない。しかたないので、駅員に言ってどいてもらった。張家界までは4時間。移動時間が30時間とか当たり前になってきた僕らには、ものすごく短く感じる。中国の田舎の風景、ちょうど桃の花や菜の花が一面に咲いているのを窓から楽しんでいると、あっという間に張家界駅に着いてしまった。

さすが、中国一大観光地とも言うべきか。駅から降りたとたん、客引きがすごい。カンボジアのプノンペンに負けないくらいの客引きのしつこさだった。「不要、不要(ブーヤオ)」と言っても全然諦めずに引っ付いてくる。駅前から観光の目的地である張家界"武陵源区"行きのバスが出てるはずなんだけど、見つからない。それよりも10人くらいゾロゾロと客引きが金魚の糞みたいに付いてきている状態が、さすがにうざったくなってきたので、とりあえず市内行きのバスに乗り込んだ。

市内行きバスで、武陵源区行きのバスはどこで乗るんだろう?と思い、バスの車掌のおばさんに聞いてみると、バス車内に乗っていた全員に「誰か教えてやって(たぶん?)」と呼びかけると、一斉に皆こっちを振り向き、ジロジロと見られてしまった。(怖っ!)
でも、やっぱり親切な人はいるようで、最初に大学生らしき若い兄ちゃんがものすごく発音の悪い英語で話しかけてきた。早口な上に発音が悪すぎて、三回ほど聞きなおさないと言っている事が全く解らない。「ここで降りて」というので、一緒に降りる。同じく親切に何か伝えようとしていたおばさんも降りてきた。車掌さんも降りてきた。三人に囲まれながら、色々説明されるがよくわからない。「ここで座って待ってて」と言われるも、なんでここで待っておく必要があるのかさっぱりわからない僕らは理解できない。「はぁ?なんで?」みたいな顔をして不思議そうな表情をすると、全然言葉が伝わらない事に諦めたのか、発音の悪い英語の兄ちゃんは去っていった。
次はおばちゃんの出番だった。おばちゃんは携帯電話を取り出して、僕らに渡した。渡された電話の向こうでは、よくわからない英語を喋っているオバサンの声が聞こえる。身振り手振りが付いてようやく向こうの言いたい事が解るくらいの、英語力しかない僕らには電話で英会話なんて無理でした。「ごめん、ぜんぜんわかんないや」と携帯電話を返す。ここで、車掌さんも諦めたようで、去っていった。でもおばちゃんはまだ、諦めないようで、今度はさきほどの電話先の主を呼び出したようで、「ちょっと待ってて」と言う。5分程半信半疑ながらも待っていると、来ました。でも、来たのは旅行ガイドをしている人だった。(タダの客引きやったんかぃ!おばちゃん。)僕らは「個人で回りたいから、ツアーやガイドは要らない。武陵源区行きのバスを教えて欲しい」と言うと、バス乗り場まで案内してくれた。乗り場というよりも、[武陵源区行きのバスが通る道]と言った方が正しい。バスが来たのを見つけて、強制的に止めてバスに乗り込む。武陵源まで1時間、8元(120円)

ようやく武陵源に付くと、さっそく宿探し。いつものように招待所を探す・・・。が、全く見当たらない。必死に街中をぐるぐると回るが一軒も無い!しかも、ここでもうざい客引きがずっと付いてくる。一時間程、客引きを連れまわした頃、もうしかたがないのでと、財政的に厳しいけど普通のHOTELで泊まることに決めた。一泊の料金を聞いてみると、やっぱり高い!そんなに大きくないHOTELでも一泊180元(2,700円)と言って来た。あまりにも値段がきついので、また違うHOTELへ。
次のHOTELでは、最初からロビーに一泊290元と書いてある。でも今はシーズンでもないし、安くしてくれるだろうと聞いてみると、下げてはくれたが一泊二人で180元だった。ここらへんの地区の相場なのだろうか?観光地料金なのか?でも、とてもじゃないけど、こんな料金は払ってられない。さらに値段交渉だ。
「学生割引は無いの?」と例の学生証を見せながら言うと、150元にしてくれた。だがまだこれからだ。
「3連泊するから、安くしてよ」と言うと、120元まで下がった。もう一声!
「どうせならキリの良い100元にしてー」と言うと、「それは無理」とあっさり断られる。
「ん~、じゃあ110元(1,650円)では?」と言うと、しばらく考えてから「しかたがないわ」となんとか交渉成立。それでも、招待所の2倍程の値段だ。厳しい事に変わりが無い。しかし、部屋は招待所とは比べ物にならないくらい綺麗だ。さすがHOTEL(秀山大酒店)。

部屋に荷物を置いて、速攻で食事処へ!そうなのだ、今はもう午後6時前なのに、僕らは朝から何も口にしていない。お腹が悲鳴を上げていたので、結構高そうな店にもかかわらず、気にせずに入った。そこでは、鶏肉団子と何かの肝とキノコが入った鍋と水餃子を注文。ムチャクチャ美味い上にすごい量だ。空腹だからなのもあるけど、美味すぎて昇天するかと思った。美味しいからやっぱり人気店だったようで、午後7時頃になるとお店は満席になった。値段は二人で42元(630円)、いつも10元前後(150円)で夕食を済ましている僕らにはちょっと高かったけど、味がよかったので満足。

鶏肉団子と何かの肝とキノコが入った鍋
水餃子HOTELに戻る道に、パン屋さんを発見。明日、武陵源区をハイキングするときの昼飯にと買おうとすると、なんと店番をしているのが4,5歳のすごく可愛らしい女の子だった。「このパンを一個頂戴」と指さしたパンを一個ずつ、小さな手で一生懸命ビニール袋に入れては、パンを並べたショーケースの上から、背伸びして手を伸ばして「はい」と渡してくる。こちらからは女の子の手しか見えない状態。その愛らしい動作に心が和んだ。それにしても、この子の親は何をしているんだろう?

仙人の住む地へ(2006/03/30)

中国の風景と言えば、大抵の人が水墨画のような山並み、もしくは刺々しく切り立った仙人が住んでそうな山並みを思い浮かべる。そのひとつ仙人がいそうな所、武陵源・天子山風景区に行く。

昨日の時点で、自然風景区の入り口近くに宿を取っているので、あとは歩いていくだけ。だが入り口にきて驚いた。ここでもまだ「案内ガイドいらんかー」と客引きがいる。そこは華麗にスルー。チケット売り場にきてもっと驚いた。入場料金が跳ね上がってる。ガイドブックには160元と書いてあったのに、来て見ると248元(3750円)に・・・。しかも学割効くのかと思ったら、それも駄目だった。それに加えて、何故か二日券しか販売していない。もう意味不明。
しかし、ここで高いからと引き返してもアホなので諦めて購入すると、なんかキャッシュカードと同じICチップ付きの豪華なカードを渡される。それを持って入場ゲートに行くと、「指だして」と言われるので、手をおばちゃんの前に出すと、親指をつかまれ機械にピッと当てさせられた。すると液晶画面に僕の指紋が写った。指紋認証式みたいで、指紋記録されちゃった。なんか犯罪者にされたみたいで気分悪い。指紋とられたなんて生まれて初めてじゃないだろうか。もしかして、このふざけた制度の為に値上がりしたのかも。普通に一日券を販売すりゃいいのに、使い方を間違えたところに無駄に技術を使うのが、中国人らしいっちゃらしいが・・・。ちょっと高すぎだろう。中国人からすると100元は日本でいうと10,000円のような感覚なのに、異常だと思う。
入場してからは、バスで移動。バスで移動した先はロープウェイだった。ここでも金がかかった。ロープウェイ52元。もうどうにでもしてください。

武陵源・天子山風景区のICチップ付き入場券
武陵源自然風景名勝区長年の風雨にさらされて侵食した山の景色はたしかにすごい。すごいけど、やっぱり空気悪すぎ。目に見えて空気が霞んでよく見えない。霧でも出てたら雰囲気があったんだろうが、それもなく天気はいいけど、先までよく見えない。それでも、山並みが一望できる"賀龍公園"というとこで見た景色はかなり良かった。まさに漫画などで出てくる中国風景といった感じだ。でも公園内には何故か戦闘機MIG-29の実物(でも白いペンキで塗りかえられてる)が展示してあったり、銅像があったり、人工的なお花畑をつくったりと世界自然遺産までもテーマパーク的にしたがる中国人は、やっぱり理解不能だ。本当に大切なもの、保護しないといけないものなどを解っていないんじゃないだろうか。上層部は金儲けの道具としか考えてないに違いない。
賀龍公園
賀龍公園2しばらくぼーっとした後、山を降りる。また高いお金を払ってロープウェイを使うのも癪だから、歩いて下りることにした。なによりリーが昇りのロープウェイ代を払って、予想外の出費により中国元がすっからかんになっていた。
高低差のある山に沿ってつづく階段15kmほどの道のりを、何度もロープウェイに素直に乗っておけばよかったと後悔しながら歩いて町まで戻っていった。

長沙(2006/04/01)

物価が高く、客引きばかりの張家界に正直嫌気がさしてきた。もう見るものも見たし、さっさと次の目的地へ移動しよう。次の目的地は、中国・明の時代から残されてきている城壁が町全体を囲っている"平遥古城(へいようこじょう)ピンイャウ/Pingyao Gucheng"へ行きたい。張家界からは直接行けないので、いったん湖南省の省都である"長沙"へ向かう。

バスで約5時間揺られながら、長沙に到着した。なんのことはない、面白みもなく発展した普通の街だ。観光する所もないので、明日出発の"平遥"行き列車切符を購入しに行く。
長沙は湖南省の省都とはいえど、長沙駅からの始発列車は少なく、乗車できる列車のほとんどが途中乗車だ。すなわち始発駅にそのほとんどの座席の切符が買われてしまい、ここで購入できる切符は非常に少ない。購入窓口に行ってみると、それに違わず明日発の硬臥(ハードベット)の切符はすでに売り切れており、5日後の分しか残っていなかった。5日間も長沙にいても退屈極まりないので、かなり辛いことになるが、覚悟の上で硬座(ハードシート)の切符を購入。購入時に到着時間を聞くと驚愕!なんと26時間だ。丸々1日間、硬い椅子で座り続けなければならなくなった。