「カザフスタン共和国」シルクロードを放浪した2006年の旅行記

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カザフスタン(2006/05/14)

今日は、旅の疲れを癒してくれたイシク・クル湖に別れを告げて、カザフスタンのアルマトゥへ向かう。まずはキルギスの首都ビシュケクに戻るため、チョルポン・アタのメインロードでバスを待つ。10分ほどしてビシュケク行きのバスが走ってくるのが見えてきたので、手を振って止めて乗り込んだ。
かなり休憩を取りながらバスは走っていたのでビシュケクに着いたのは、予想外に遅く6時間後の午後4時だった。今から国境越えってのも、ちょっと遅いなとは思ったけど、移動は出来る時に一気にしてしまったほうが、良いとも思い。そのまま国境を越えてカザフスタンに入ってしまうことにした。
バスターミナルで、カザフスタンのアルマトゥにいくバスを探し乗り込む。料金は250COM(700円)、情報よりちょっと値上がりしている。

バスで1時間ほど走ったところに、川を隔てた国境があった。ここの入出国審査はムチャクチャ簡単だった。キルギス側の出国審査なんて、橋の前に立ってる審査官にパスポートを見せると、なんと立ったまま、ポケットからおもむろに出国スタンプを出し、その場でポンと押された。たった5秒で出国が終了。流れ作業のように早い。
カザフスタンの入国も、税関申告書を書かないといけないはずなのに、別に書かなくてもいいよと言われ、入国カードに記入して、パスポートと一緒に提出して終了した。荷物検査とかも何もなかった。トータル5分くらいで、カザフスタンに入国できてしまった。

カザフスタンの草原カザフスタンに入り、少し車窓を見ると、景色が少し変わってきた。はるか先まで、見えなくなるまで草原がずっと続く、モンゴルのような風景だ。
アルマトゥに着いたのは、午後9時過ぎ。深夜でも運良く両替所が開いており、なんとかカザフスタン通貨のテンゲを手に入れることができた。テンゲのレートは(1ドル=121テンゲ)なので日本円と近い感覚で使いやすい。

物価上昇(2006/05/15)

昨日の深夜、カザフスタンに着いたばかりだが、今日は、さっそくキルギスでもやったようにレギストラーツィア(滞在登録)をしに行く。それと同時にウズベキスタン大使館に行き、ウズベキスタンのビザを取得したい。

カザフスタンの旧首都アルマトゥまず、レギストラーツィアをする役所・オビールに行く。カザフスタンの旧首都アルマトゥは一度地震で崩壊してから、ソ連統治時代に作られた街で、道路は碁盤の目に綺麗に区画されている。街中に沢山の木が植えられており、まるで森の中を歩いているような感覚に陥ってしまう。残念ながらシルクロードの中継地としての面影はまったく見られない。あるのは様々な人種が入り乱れている所ぐらいだろうか。その森林街を歩いて、小道の中のわかりにくい場所にオビールはあった。

中に入ると、丁度昼休憩中らしく係員が一人もいなかった。午後2時から開くと書いてあったので、近くのファーストフード店で昼食がてら待つことにした。カザフスタンは物価が高い。日本とあまり変わらないんじゃないだろうか。普通のハンバーガーセットで380円もする。味は凡庸。クルクルと回転するあぶり焼きの肉を挟んだキルギスの露天バーガーはムチャクチャ美味しく、しかも80円と安かったので、あまりのギャップに驚いた。出来ることならあまり長居はしたくない国である。

2時になったので、さっそくオビールへ。窓口に行き、「レギストラーツィア」と言うと、意外な言葉が返ってきた。
「レギストラーツィア、ニェット(否定語)」
窓口のお姉さんの言ってる意味がよくわからなかったので、もう一度「レギストラーツィア」といい、事前に書き留めておいた【日本人は滞在して5日以内にレギストラーツィアしなければなりません】の文章を見せる。すると、カザフスタンの入国時に書いた入国カードと査証を見せながら、身振り手振り説明してくれた。たぶん普通に解釈すると、レギストラーツィアの制度自体が無くなったようで、僕らも滞在登録をする必要がないらしい。何にしても、物価の高いカザフスタン一日も長く居たくない僕らにとっては非常に助かった。

その足で、今度はウズベキスタン大使館へ向かう。当てずっぽうに市バスに乗ったのでバスの到着場所がはっきりしない。ある程度、大使館に近づいてきたら適当に下りて、後は徒歩というやり方でなんとか大使館に到着。バスは安かった30円。
大使館に行くと、申請用紙を渡されて、あとはパスポートのコピーと写真が必要と言われた。しかしパスポートのコピーを持ってきてないので、近くにあったLG電子の会社があったので、そこの受付のお姉さんに「すいません、コピーお願いできますか?」と厚かましくも頼んでみると、快くコピーしてくれた。代金を渡そうとすると「ニェット(否定語)」と笑ってくれた。旧社会主義国も人が変わってきているようだ。
気を良くして、大使館に戻りパスポートのコピーと申請用紙を提出しようとすると、「ニェット(否定語)」ともうここに来て聞きなれてしまった言葉がまた返ってきた。「もう申請時間過ぎたから、明日の午後2時にまた来なさい」と英語の喋れるお姉さんに言われた。「別に今受け取ってくれてもいいじゃないか。これだから役所仕事は!」とも言えず、怒らせてもしょうがないので、素直に明日また来ることにした。あまりカザフスタンに長居したくないけど、こればかりはしょうがない。

手持ちの所持金が心細くなってきたので、大使館近くにあるシティーバンクのATMでキャッシュ$500を引き落とす。為替レートが$1=\112になっていた。なんでそんなにドルが下がってるんだろうか。情報がまったく入ってこないので解らない。しかしこれで、両替所でドルからカザフスタン通貨のテンゲに両替した時に妙にレートが悪かったのが納得いった。

昨日、深夜転がり込むようにして泊まったガスティーニッツァ(ホテル)・ドイトに戻り、部屋で一息ついている時、ふとホテルの領収書を見ると、おかしい事に気がついた。僕らは2泊のつもりでお金を払ったのに、領収書の日付を見てみると、今日チェックアウトになっている。これはどういう事だと、フロントで質してみると、なんと僕らが2泊と言ったのを2人と向こうはとらえていたようで、実際は1日の料金らしい。つまり、カザフスタンではツインで泊まったからといって、一人分が安くなる訳ではなく、二人で泊まるとちゃっかりとシングル部屋の倍の料金を取られてしまう。料金表をみせられながら、逆に説明されてしまった。ということはカザフスタンでは無茶苦茶ホテル代が高くかかる事になる。ここでは一泊一人で2,800Tr(2,700円)だった。部屋の設備は、TVはあるけどシャワーのお湯は寒いぐらいヌルいし、決して綺麗とはいえない部屋でだ。コストパフォーマンスは最悪。宿泊施設の料金の高さは日本を凌ぐかもしれない。馬鹿馬鹿しいので、すぐにチェックアウトして、もっと安く泊まれるホテルに移動することにした。

タクシーをつかまえて、(タクシーといっても、カザフスタンは、ほとんどが白タク)安く泊まれるホテルに連れて行ってもらう。着いたところは街の南側、しかしホテル・ドイトよりも大使館が近く交通の便は良い。一泊一人で1,000Tr(950円)だ。シャワーは共同で使用に付き100Tr取られるが、ドイトに泊まっているよりも財布にはやさしい。カザフスタン・・・物価が高すぎる!

ウズベキスタン大使館(2006/05/16)

昨日、午後2時に来いと言われたので、そのとおり大使館に行く。
ビザの申請用紙を渡すだけだと思ったが、順番登録してからの待ち時間が長い長い。僕らの整理番号は14番だったのに、実際に窓口で申し込みが出来たのは3時間後の5時だった。恐ろしく一人一人の処理が遅い。こんな大使館は初めてだ。しかも、僕らの前に受け付けた人と言い争いをしていたので、最初から対応がブチ切れてる。一言質問するたびに怒鳴られる始末。ものすごく不愉快な思いをした。しかもこの大使館、水・金・土・日曜日が休みという週休4日制をとっていてかなりふざけている。おかげで受け取りは予想以上に遅く来週の月曜日とのことになった。この何にもないアルマトゥの街にまだしばらく滞在しなければならないとは、暇なことこの上ない。

ビザ取得まで(2006/05/22‐24)

先週の火曜日にウズベキスタン大使館へビザを申請したときに、来週の月曜日の午後2時半に取りに来いと言われたので、今日の昼の2時頃に大使館に行く。この大使館は中に入るのに順番登録しなければならない。大使館に来てすぐに名前を書いたが15番目だった。この処理能力の低い大使館ではかなり厳しい順位だ。

待つこと3時間、午後5時になった。つい先ほど11番目の人が入ったばかりだ。そのとき、警備員から出た言葉が「クローズ!」
唖然・・・。つまり今日はもう終了。明日来いということだ。この5時まで待った時間がまったく無意味になってしまった。10人ばかり打ち切られた人が他にもいたが、皆このような仕打ちに慣れているのか、素直に帰っていく。他の外国人パッカーたちも「See you tomorrow」と言って帰っていった。まさに門前払いだった。予定がズレてしまったが明日また行くしかない。

【5/23】
昨日のような失敗をしないために、今日は早めに12時に大使館に行って、さっさと順番登録してしまおうと考えていた。しかし、12時行くと、信じられないことに昨日あぶれた人達が僕らよりも先に殺到していていた。それでも順番登録しようとすると、警備員から「No!Tomorrow」
すでに20人超えしている状態だったので、もう登録しても無駄だから明日来いという意味らしい。またしても門前払いだ。信じられない!

【5/24】
連日で大失敗を食らったので、今日こそは!と意気込んで、11時に大使館に行く。もうこのウズベキスタン大使館へは、申請を含めて今日で5回目だ。いい加減、ホテルから大使館までの道程に飽きてきた。大使館に着くと、「Hello! My Friend」と警備員の兄ちゃんに言われるくらい、何度も足を運んでいる。今日こそはなんとしてもビザを取らねばならない。なぜなら、カザフスタンのビザが26日で切れてしまうからだ。明後日にカザフスタンを出ないと、不法滞在になってしまう。

こんなにシビアな状況なのに、順番登録しようとすると、警備員から「まだ時間が早いから、2時半にきて」と言って登録してくれない。「My Friendじゃねーのかよ!ビザの期限がもうないんだけど」って言っても取り合ってくれなかった。しかたないので、昼飯食べてからまたくる。

シャシリク(羊の肉の串焼き)
ラグマン(羊の肉麺)いい加減、中央アジアの料理にも飽きてきた感じがする。基本パターンが羊の肉が主体になっていて、ショルバー(羊の肉スープ)、プロフ(羊の肉の焼き飯)、シャシリク(羊の肉の串焼き)、ラグマン(羊の肉麺)の繰り返しになっている。不味くはないけど・・・、羊の臭いが身体に染み付きそうだ。

あまり、長居してもまた順番が遅くなるのも嫌なので、すぐに大使館へ。12時頃にまた警備員に順番登録をしてもらおうとするが、やってくれない。なんか今日は順番登録しないのかもしれない。他の人も待っているだけだった。おとなしく大使館が開く2時半まで待つことにした。

2時頃になって、皆なんで順番登録をしないのかと痺れをきらして、勝手に順番決めて持参の紙に書き出す者がいた。群集心理というのはすごい。皆、その何の効力もない紙に我先にと名前を書き始める。なかなか醜い光景だ。結局、警備員が紙を取り上げて何もなかった事になったが、次の行動がおかしかった。この混乱しきった状況で、いままでしなかった順番登録を突然しだしたのだ。当然、警備員のそばに居た人が早くなる。まったく納得いかないやり方だ。僕らのように早く大使館に来た人はまったく無意味になってしまった。しかも運が悪いことに僕らはそのとき、群集を遠巻きに見ていて警備員から遠い位置にいたので、悲惨なことに一番最後の16番目になってしまった。

半ば諦め気味に、とりあえず大使館の終了時間5時まで待つ。今日は、少しだけ処理能力が早いようで、4時の時点で11人目まで大使館内に入っていった。4時半になった時点で、My Friend警備員も僕らが早くから待っていることを知っていたので、少し配慮して次に入るのを僕らの番にしてくれた。しかし、一人しか入れないという。順番登録した時点で、リーが僕より前に登録したので、自動的にリーが入っていった。時間的にリーが入れるようになったのは、5時10分前だったので、僕が入れる可能性はないかもしれない。なので、リーに僕のパスポートを預けて、二人分一緒にビザを取れるならとって来てもらうことにした。案の定、午後5時になり強制クローズになって僕は大使館の外で、リーにすべてを託して待つことになった。

待っている間、警備員の兄ちゃんや、大使館の隣にある駐車場の係員の兄ちゃんに、僕が暇そうにしていたからなのか、色々と話しかけられた。「日本のどこの生まれ?」から始まって、「ウズベキスタンではどこに行くの?」や「ウズベキスタンへは、カザフスタン人はノービザだから簡単にいける。僕もウズベキスタンのサマルカンドに行ったことあるけど、ムチャクチャ暑かった。45℃だよ。」などなど、どちらも拙い英会話での会話を楽しんだ。さらには「カザフスタンのロシア系の女性は綺麗だろ?グラマーだし、ボインもスゲーよな」など他愛のない話題まで。それにしても、中央アジアはロシアに占領統治されていたのに、あまりロシア人を嫌っていない様子だ。特に女性に対してだけど・・・。まあ、これがシルクロードの"人種のるつぼ"である良いところなのだろう。
そうこうしている内に、リーが戻ってきた。なにか浮かない顔つきだ。やっぱ駄目だったのかと思い「しょーがねえよ、飛行機でウズベキスタン越えて、一気にトルコに行くか?」なんて言うと、「ビザ代15ドルよこせ」とのお言葉。意地の悪いことに浮かない顔してたのは僕を騙すための演技だった。「え?もしかしてビザ取れたん!?ホンマに?すっげー」と素直に大喜び。
本当にギリギリの日程だったけど、不法滞在にならずに無事にウズベキスタンに行くことが叶った。